スイス大学院留学ブログ - Study in Geneva

ジュネーブでの大学院生活について綴るブログです。

スイス大学院留学を振り返って

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一番お気に入りかもしれないジュネーブの風景

11月頭にスイスから日本に帰国して、1週間後には2年以上ぶりの仕事をスタート。

少しは近況報告しようと思ってFacebook用に2年間を総括していたら、結局長くなってしまったので、ブログ投稿にします(笑)

今とこれからのこともゆくゆく書けたらいいなと思っていますが、まずは本ブログの趣旨であるスイス大学院留学が私にとってどういうものだったのか。

書きたいことは沢山あるけれど、学びという切り口でまとめてみました。

大学院で学んだこと

自分が専攻していた開発学 (Development Studies) はぶっちゃけ開発課題に関することなら切り口は何でもよくて、環境経済学、食料システム論、市民運動論、ジェンダーと開発、ソーシャルイノベーションなどなど、興味の赴くままに広く浅く横断的に学びました。

その上で、最後の約半年間を捧げる修士論文では、有機農業の認証制度の問題に焦点を当てて、日本における参加型認証制度 (Participatory Guarantee Systems: PGS) の社会的意義と可能性を研究しました。かなりマニアックな話なので端的に言うと、第三者機関による有機JAS認証だけではなくて、生産者や消費者といった多様なステークホルダーの主導による参加型認証が認知・許容されれば、政府によるトップダウンだけではなく市民主導のボトムアップによる有機農業が共存できて、有機農業の拡大を促進できる可能性がある、という趣旨です。

もともと食と農の問題について学びたくて進学した面もあるので、ひたすら有機農業や社会システム転換について探求できた時間は純粋に楽しかったです。何より、目の前で起きている事象の因果関係を、様々な階層(international-national-local)から分析するマクロな視点を得られたことが一番の収穫でした。加えて、指導教官に”Welcome to the world of certification.”と言われたくらい、認証制度の奥深さと複雑さも学びました。残念ながら、まだ研究から具体的なアクションには繋げられていないですが、研究で繋がった国内のPGSグループの方々の活動をお手伝いできたらとは思っています。

以上のような個別具体的な学びがある一方で、この2年間で一番鍛えられたことは、批判的思考(critical thinking) と自分の主張を言語化して他人に理解・納得してもらえるように伝えるスキルです。1500ワードのエッセーを書くのにも苦労していたところから、22000ワードくらいの修士論文を書けるようになる過程は、苦しくも久々に自分の成長を実感できたプロセスでした。欧米の学術的規範が絶対的に正しいとは思いませんが、自分で思考する力は普遍的に重要だと思うので、日本の教育変わらないと駄目だよな…と痛感した留学でした。

 

日々の暮らしから学んだこと

ジュネーブでの日々の生活は、フラットメイトや友人とごはんを一緒に作って食べたり、課題で助け合ったり、旅行に行ったり、勉強以外は一人でいることがほぼ皆無になった2年間でした。スイスに渡航して半年で新型コロナ大流行でしたが、良いか悪いかスイスは規制がゆるゆるで、ほとんどストレスや孤独感を感じることなく過ごせたのは不幸中の幸いだったかもしれません。

とは言っても、最初の数ヶ月間は授業や課題のレベルについていけず、何しに来たのか自問自答する毎日で、鬱の一歩手前くらいのメンタルヘルスのひどさでした。誰にも言ってないけど、学期末にカウンセラーの前でボロボロ泣いたのも、今となっては忘れられない思い出です。そこから毎日「今が一番幸せ」と思える状態になるまでの過程からは、頼れるコミュニティや自分自身のレジリエンスの大切さを学びました。

また、ヨーロッパ域内を自由に移動することはできなかった分、スイス国内や周辺国を深く見ることができた2年間でした。外からは謎に包まれているスイスの中にいると見えてくるものは多く、直接民主制や連邦制をはじめとする政治・ガバナンスのあり方や、自然・景観を含めたQOLを大事にする文化規範が印象深かったです(スイスが綺麗というのは本当です笑)。そのまま日本や別の国に適用することは無理ですが、こういう社会や暮らしが可能だということを自分の目で見て感じられたことは一生の財産です。

最後に、将来日本で起業したいという大学院同期2人との出会いも、大きな出来事でした。私はサポーター的に関わっていますが、2人のエネルギーと実行力がすごくて、良い刺激をもらっています。英語オンリーですが、Makers on a Mission というメディア名で起業家インタビューやブックレビューを配信し始めたところなので、興味あればぜひフォローしてください。ブログとポッドキャストは英語教材としてもぴったりです!

www.makersonamission.org

 

まとめ

これらの学びと経験をどう生かしていくかはこれからですが、とりあえず環境(人・場所・時間の使い方)を変えてコンフォートゾーンを出ることで学べることの量と質は半端なかったです。また書きたいことがまとまったら投稿します。それでは!