スイス大学院留学ブログ - Study in Geneva

ジュネーブでの大学院生活について綴るブログです。

【現地より】最近のジュネーブでの生活

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満開を迎えたマグノリア木蓮)の花

コロナウィルスの拡大が止まらないスイスより投稿しています。
ここ1−2週間で日常が様変わりしてしまいました。良くも悪くも。

こんなときに欧州にいるのも特別なことだし、内省する時間もたっぷりあるので、最近の様子や感じたことを書き留めておこうと思います。

大学院の授業はオンラインに完全移行

まず私が在籍している Graduate Institute (IHEID) は先週金曜から1週間の休みに入りました。理由としては、すべての授業をオンラインで提供するための準備期間が必要だからです。来週月曜から春学期が再開し、学期末までこのまま全面オンラインでの授業です。先週木曜に通知を受けたときには急だったのでびっくりしましたが、翌日にはスイス政府もすべての学校に閉鎖を要請したので、真っ当な判断でした。

オンライン授業は教授も学生も手探りで進めていくことになりそうですが、今後の教育のあり方を考えたり試したり機会としては悪くないと思います。個人的には、日本の大学が春休みでなかったとして、同じようにオンラインに移行できるのか、教授や大学関係者に聞いてみたいです。私が学部生だった4−5年前の様子では無理ですが(レポートを紙媒体で提出するが普通)最近はIT化が進んだのでしょうか?

他にも、対策検討チームの設置方法や学生へのコミュニケーションには感銘を受けました。対策検討チームには大学院職員に加え、Global Health Centerの教授(=公衆衛生の専門家)と生徒会の学生メンバーも含まれており、横断型の連携が取れていました。日本が陥りがちな役人頼みや縦割りとは対照的というのが1点。そして2点目のコミュニケーションも、対策検討チームが策定した Phase 1,2,3 のどこにあるのかというのが随時メールで共有され、情報についての混乱は一切ありませんでした。ちなみに現在は Phase 3 に到達してしまい、授業のオンライン移行に加えて、大学院の施設(図書館等)も完全閉鎖中です。

授業のオンライン移行に伴い物理的にジュネーブにいる必要はなくなったので、母国に帰国した学生もちらほらいます。欧州はイタリアを筆頭にスイスも含めて深刻な状況なので、母国が比較的安全なのであれば帰国した方が無難でしょう。私は日本の状況もあまり変わらないと思っているので、公式な帰国要請がない限りはジュネーブに残るつもりです。家族や友人には心配をかけて申し訳ないですが。。。

 

スイス・欧州のコロナウィルス対策について

BBCニュースで報道されていましたが、イタリアでのコロナウィルスによる総死者数が中国の総死者数を超えたようです。中国のデータの信用度はともかく、イタリアは本当に危機的状況にあります。イタリアは過去に財政再建のために医療予算を削った結果、医療体制が十分に整っておらず、病床数や医療従事者が不足しているそうです。病院では優先して治療する患者を選択しなければならず、北イタリアの地元新聞は追悼欄のページが続く。まるで戦時中のようですが、現在のイタリアの状況です。

そんな北イタリアに接しているスイス。正直かなり危うい状況にあります。死者数は周辺国に比べて低いですが(約60人)、感染者数は約6000人(2020年3月21日時点)。毎日数百人単位で増えており、人口100万人あたりの感染者数は世界トップ5に入ります。イタリア・スペイン・フランスのように外出禁止令は出ていないですが、学校は閉鎖、スーパー薬局等の生活必須サービスを除き店舗営業は禁止。これでも周辺国に比べてまだ緩い方なので、これからイタリア・フランス・スペインのように規制が厳しくなる可能性は十分あります。

なぜたった1ヶ月程度でヨーロッパが感染の震源地(epicenter)になってしまったのか?理由は色々あるはずで、今後の研究対象になることは間違いないですが、複数の要因の一部として①欧州の価値観や生活様式EUのヒト・モノ・カネの自由な移動の原則裏目に出てしまったのではないか?というのが個人的な所感です。

①について、欧州ではスキンシップ(ハグや握手、挨拶代わりのキス)が当たり前、親戚や友人と集まってホームパーティーするのが日常茶飯事。今となっては social distancing が浸透し、各国もかなり厳しく取り締まるようになったので見かけなくなりましたが、イタリアがひどい状況になるまでは多くの人が何も気にせず行動していました。それに比べてアジアはスキンシップが少なく、マスクを着用して他人との距離を取ることへの抵抗が少ないと思います。また、これはオランダ人のフラットメイトが指摘していましたが、欧州が深刻な事態に陥ることはないという過信(arroganceと言っていました)も背景にあったのではないかと思います。

②については欧州が陸続きということもありますが、スイスも含めて欧州各国の感染は北イタリアに渡航歴のある人から始まったにもかかわらず、つい1週間前まで人の移動を規制する動きは乏しく、各国の感染者数が増える中でも欧州内での人の移動は変わらず続いていました。特に北イタリアに接しているスイスは、イタリアからの人の移動を規制してウィルスの流入を防ぐべきだったと思いますが、特別な措置は取られませんでした。ティチーノ州などが経済的に北イタリアに依存しているので難しいという主張は分かりますが、今やICU(集中治療室)が足りなくなる危機が迫っていることを考えると、思い切った手段を取る必要があったと思います。

※補足:スイスはEU非加盟ですが、シェンゲン協定には加盟しています。

※スイスの最新状況についての政府公式ページ:

Current situation – Switzerland and international

※より正確なコロナウィルスに関する欧州とアジアの比較については、BBCの記事が参考になります。

Coronavirus: What could the West learn from Asia? - BBC News

 

それでも日常は工夫次第で明るくできる!

先の見えない不安をかき消すことはできない状況にありますが、幸い日々の生活はそこまで変わらず送ることができています。もちろん気軽に外出できなかったり、同じ寮に住んでいない友人と会うことが難しくなったり、制約はあります。でもその分、新しいこともするようになり、毎日明るく過ごせています。

・オランダに戻ったフラットメイトが置いていった植物のお世話(バジル栽培は成功させたい!)
アメリカに帰国した友人から譲り受けたピアノを毎日フラットメイトが弾いて一緒に歌う(生のピアノ伴奏で贅沢なカラオケです笑)
・買いだめた食材を使って毎日交代で料理をする(新しいメニューに挑戦するのがルール)

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苺とマスカルポーネのタルトに挑戦(これぞインスタ映え?)

授業が急遽なくなり勉強のリズムは正直狂ってしまいましたが、色々な環境変化に適応する期間として1週間の休みは必要だったように思います。

明日には授業が再開、予習や課題で忙しい日々が戻ってきます。月末には修士論文のアウトラインを出さねば。。。

つらつらと今の状況を書き留めてみましたが、自分はかなり平和な方で、アメリカでは寮を追い出されて困っている留学生もいると聞いています。

短くて貴重な大学・大学院での時間がこのような形で失われてしまうことは辛いし残念ですが、1日も早く心落ち着いた状態で生活・勉強できる日々が戻ってくることを願っています。