スイス大学院留学ブログ - Study in Geneva

ジュネーブでの大学院生活について綴るブログです。

国際開発研究大学院(IHEID)について

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Graduate Institute があるキャンパス Maison La Paix の前で

海外大学院出願の記事ばかり投稿してきましたが、いい加減ジュネーブでの大学院生活について(笑)
まず私が在籍している大学院 Graduate Institute について紹介します!

 研究大学院かつ小規模ということもあり、Graduate Institute(正式名称については後述)についての学生目線での情報は、英語でも多くはありません。日本語だと私が知る限りではブログ1件だけです。

大学院の売り込みや宣伝ではありませんが、出願や入学を検討している方も一定数いるはずなので、このブログで少しでもお役に立てればと思います。

IHEIDの基本情報

まずは名前から説明しないといけません。なぜなら超長い!からです。
以下に英語・フランス語・日本語での名称を並べてみました。

The Graduate Institute of International and Development Studies
L'Institut de hautes études internationales et du développement (IHEID)
国際開発研究大学

とにかく長いので、基本は略称の Graduate Institute IHEID が使われています。
大学院っぽくない名前なので、知らない人には大体2回以上言わないと分かってもらえません(汗)

成り立ちをざっくり書くと、第一次世界大戦後にジュネーブに置かれた国際連盟で働いていた人たちが、研究・人材養成機関として設立したのがはじまりです。長らく国際関係学に特化していましたが、1960年代に開発学に特化した研究所が併設され、2008年に2つの研究機関が合併して現在の大学院の形になったようです。

その成り立ちゆえ、学士課程はなく、研究を前提とした修士・博士課程のみ。プログラムも社会科学に特化したものとなっています。修士課程では6つの disciplinary programme と2つの interdisciplinary programme があり、私は後者に含まれる Master in Development Studies のプログラムにいます。

最新のデータによると、修士・博士課程を合わせて学生962名、学生の出身国は100カ国以上にのぼるようです。大学院の規模をふまえると、学生の多様性は一目瞭然。まさに国際都市ジュネーブを体現しています。

出願プロセスは一般的な欧州の大学院と変わらず、学士、学士課程の成績、英語スコア、志望動機書、推薦状を揃えて提出するスタイルです。ただしイギリス等の rolling basis(出願締切がなく、出願があったら都度合否を出し、定員に達したら締め切る)ではなく、早期出願(11月)、通常出願(1月)、後期出願(3月)の3つの締切が設けられており、合否も一斉に出されます。私は1月中旬に出願して3月中旬に合否通知がありました。

著名な卒業生としては、国連事務総長を務めた故コフィ・アナン氏がいます。その成り立ちからも想像できるように、今でも国連や国際機関との関係が強いです。ちなみに国連ジュネーブ事務局(Palais des Nations)は大学院から徒歩10分くらいのところにあります。数日前には現在のアントニオ・グテーレス国連事務総長が若者との対話のために来校されていました(おそらく今年一番の大イベント!)。

 

IHEID をおすすめする3つの理由

1. 世界各国からの学生

100カ国以上から学生が集っているという実感は正直ないですが(内向型なので汗)、スイス人学生は10%程度しかおらず、残りの90%は欧州・アジア・アメリカ・アフリカ・中東からの学生です。毎日の授業や会話で、他の学生から世界各地の話を直接聞けるのはやはり刺激的ですし、日本では日常的に話されないテーマ(例:ジェンダー植民地主義、移民)が日々議題に上がるのも多様性のメリットかなと思います。また、日本のこともよく聞かれるので、日本のこと(特に歴史と政治)をもっと知らなければという気になります。

2. 幅広い選択肢

これは interdisciplinary programme に限りますが、履修できる科目の幅がとても広いです。開発学の場合は3つの専門領域(specialisation)から1つ選び、その領域の科目を中心に学びますが、専門領域を選ぶのは1学期の終わりなので、色々な授業を取りながら自分の専門および研究テーマを決めることができます。また、専門領域を決めたとしても、それ以外に自由に取れる科目の枠が多く、私は Environment Track ですが別のTrackの Entrepreneurship や Globalization についての授業を取っています。加えて disciplinary programme の授業も定員枠があれば履修可能です。

3. 恵まれた立地環境

将来、国際協力や人道支援の道に進みたいと思っている人であれば、英仏バイリンガルで国際機関が集まっているジュネーブという環境は魅力的だと思います。私はまだ応募していませんが、夏休みや2年生になって国際機関や国際NGOインターンシップをする学生は多いです。また、Graduate Institute はバイリンガリズムを掲げているので、フランス語で開講されている授業もありますし、フランス語初心者は1年間フランス語の授業を毎週受けてA2レベルのテストをパスしないといけません。(私は学部時代にフランス語を学んでB2レベルの証明書を持っていたので、提出して免れました笑。その代わり、外部で開講されているフランス語中級講座に週2回通っています)

 

IHEID をおすすめしない3つの理由

1. 増える学生数

2014年(?)に現在の Maison de la paix キャンパスが開校して以来、学生数が急増しているようです。それでも小規模ですが、個人的には30−40人のこじんまりしたコースを想像していたのに、開発学コースだけで80−90人の学生がいることを知ったときは正直少しがっかりしました。授業も定員30−40名と割と中規模のクラスが多いです(大講義タイプの授業もいくつかあります)。ただし教授との距離感は行動次第(発言したりオフィスアワーに行ったり)で縮められるので、そこまで弊害はないかもしれません。

2. 浅く広くなアプローチ(注:interdisciplinary program に限る)

これは上に書いた「幅広い選択肢」の裏返しですが、様々な学問分野を横断的に学べる反面、特定の分野への知見を深めることは難しいです。もちろん履修する科目次第で一貫性を持たせることは可能ですが、アカデミックな専門性を重視する場合は disciplinary program をおすすめします。interdisciplinary program には、自分も含めて研究重視というよりは実用性重視な学生が集まっています。

3. 高い生活費

言わずもがなですが、スイスは世界一物価が高いので、学費よりも生活費がかなりの負担になります。ちなみにIHEIDの学費は2年間で16000スイスフラン(約180万円)、生活費は1ヶ月約10−15万円です。アメリカやイギリスの大学院に行くよりはコスパ的に優れていると思いますが、それでもかなりの金額になります(※)。また、これは個人的な印象ですが、ジュネーブは殺風景なので住み心地がいいかと聞かれると???です。近くの公園やレマン湖のほとりは好きですが、愛着がわかないので長く住みたいとは正直思いません。。。
※IHEIDによる奨学金は結構充実しており、修士課程の学生の半数以上が奨学金を受給しているそうです。気になる方は調べてみてください。私はJASSOの奨学金にお世話になっています。


以上、かなり主観的な意見が含まれていますが、大学院の紹介でした!

そういえば、もうすぐ今年1月出願の合否発表ですね。
昨年の今頃そわそわしていた自分が懐かしいです(笑)

合格してIHEIDに進学するか悩んでいる方、質問等あればお気軽にどうぞ!